手術後3日目(4)笑いの伏兵
2020年6月に卵巣破裂→緊急搬送→摘出手術。その体験を書いています。
↑この続きです。
開腹手術後のくしゃみと咳。
これさえ回避できれば、あとはもう大したことはない。
と思っていたところに、いきなり現れた伏兵。
「笑い」の伏兵。
まったく油断しておりました。
ある意味、くしゃみや咳より笑いは厄介なのかもしれないです。
笑いには、対処法がないからです。
笑うことで傷が痛んでしまうことは、過去の開腹手術(帝王切開2回)で経験していました。
そして、軽く笑う程度なら大した痛みにはならないということも知っていました。
そう、
ウフフ程度の笑いなら、問題はないのです。
コロナ禍の入院で、病室内に見舞い客は一人も来ないので、
傷が痛くなる程笑うことはないだろうと、たかをくくっていました。
そんな笑いに対して無防備だったところに現れた、思わぬ伏兵…
私がいる病室は一つベッドが空いていたのですが、
そこに、ある女性が入りました。
その女性こそが、笑いの伏兵でした。
このブログ内で、
WARAIさんと呼ぶことにします。
WARAIさんは、しきりのカーテンで姿は見えませんでしたが、
漏れ聞こえてくる医師や看護師さんとの会話で、
どうやら救急搬送されてきて、急な入院となった方であるようでした。(私と一緒)
お孫さんがいらっしゃるようなので、私より年上の方だろうと思いました。
どうして産婦人科病棟での入院になったのかは分かりませんが、
体をおこすと目まいがおきてしまう状態のようでした。
ここまでは、何も笑うところなどありません。
目まいは大変そうだな…気持ち悪いだろうなと、思っていました。
この病室には、
入院されたばかりのWARAIさんと、
出産まで安静が必要な妊婦さんが2人と、
卵巣摘出手術をした私がいます。
みんな常にキッチリと、仕切りのカーテンをしめています。(コロナ禍だから?)
このご時世なので、見舞い客はゼロ。
医師や看護師さんが病室に入らない時は、とても静かでした。
私はそんな病室のベッドで、
静かに読書をしたり、
静かに窓の外を見たり、
静かにスマホをいじったり、
運命や人生について静かに考えたり、
時にくしゃみや咳と静かに戦い、
眠くなったら静かに寝て、
静かな時間を静かに静かに過ごしておりました。
同室の妊婦さん達も、とても静かに過ごしておりました。
そんな静かな病室内に、
突如 響いたWARAIさんの声。
電話をしているようでした。
電話をする時は、専用の個室に行くことになっていましたので、驚きました。
でもWARAIさんは目まいで体を起こせない状態なので、電話はここでするしかないものね、と思いました。
が。
次に聞こえてきた声で、
私はかたまりました。
電話の相手の声が、はっきり聞こえてきたからです。
WARAIさんは、スピーカーモードで通話をしていました。
静かな病室内に、母と娘の会話が大きくはっきり響きます。
ここまでは、驚きはしましたけど、
笑いたくなることはありませんでした。
でも、ここから、私はだんだん苦しむことになっていきます。
WARAIさんは、持ってきてほしいものをいくつかリクエストしていました。
娘さんはWARAIさんのご自宅にいるらしく、
言われた物を探しながら集めていました。
「ああ、下着も持ってきて」
「わかった。今、タンスの前にいるよ」
もう、私はこのやりとりで、
腹筋がふるふるして傷が痛んで困りました。
ブラジャーうんぬんのやりとりが、
静かな病室内に響き渡っているだけでも可笑しいのに、
「高そう」と何度も娘さんに強調するWARAIさんの言い方が、
面白くて仕方がありませんでした。
ダメだ、苦しい
笑ってしまう
笑うと痛むのに…
ここは、
心を無にしよう
そう、WARAIさんはただ必要なものを娘さんに頼んでいるだけなのだ。
別に何もおかしい話ではないのだ。
と、私はこれは面白いことではないと自分に言い聞かせていました。
という私の静かな苦労などWARAIさん親子は知るよしもなく、
スピーカーでの通話は突き進んでいきました。
そんな会話が続くのです。
声をあげて笑いたい。
でも笑えない。
てか、お腹痛い。
苦しい。
でも面白い。
ほら苦しい…(この繰り返し)
この日、何度もWARAIさんは娘さんに電話をかけました。
その度、その2人のやり取りにおもしろ苦しい思いをさせられました。
電話も3度目くらいになると、
今度はどんな話をするのかと楽しみにしている自分がいました。
痛くて苦しくなるのが分かっていて、ワクワクしている自分がいる。(マゾ?)
WARAIさん親子は、とても仲がいいのです。
ポンポン弾む仲良しの会話は、聞いていてとても心地良くて面白い。(痛苦しいけど)
看護師さんが私の点滴の交換に来た時、
WARAIさんはまた娘さんに電話をかけだしました。
せいせいと響き渡る母娘の会話。
看護師さんは小声で私に、
「目まいでベッドから動けない状態なので、ごめんなさいね。
スピーカーで話さないように、言ってきますね」
と言いました。
私はWARAIさんと娘さんの会話のやりとりを楽しんでいたので、
「いえ、そのままで大丈夫ですから!」と、
「楽しみを奪わないで」くらいの気持ちで言いました。
でも看護師さんは、
「スピーカーはね、ちょっとね…」と言って、
WARAIさんのベッドに向かっていきました。
そして通話中のWARAIさんに、
「WARAIさん、お電話中ごめんなさい。
お相手の方の声が聞こえる状態で話されると、
他の方のご迷惑になりますので…」
と看護師さんは声をかけました。
「あ…はい…」
WARAIさんはそう返事をし、
看護師さんは病室から出て行きました。
私が、ああ、スピーカー通話はもう終わりか…と少しガッカリしていると、
WARAIさんは娘さんにこう告げました。
娘さん、動揺してる…そりゃそうでしょう。
それにしてもなんでWARAIさん、何も言わないのかな。
スピーカーって意味が分かってないとか?
WARAIさんが黙っている間も、娘さんはヤダヤダと騒いでいるので、
私はまた可笑しくなってしまい震えました。
すると突然、
「ああ、それでさお母さん、話変わるんだけど…」
と、娘さんは何事もなかったように普通に話し出しました。
WARAIさんも、何事もなかったように会話をし始めました。
WARAIさんは2日間入院して、退院されました。
この2日間はWARAIさんと娘さんの会話を何度も聞けて、
とても面白く苦しかったです。
私は青いブラジャーを持っていないけれど、
お店などで見かけたら、真っ先にWARAIさんのことを思い出すと思います。
「手術後4日目」に続く。
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「おまけ通信」
9日ぶりの更新です。
ここのところ、ブログを書いたり読んだりする時間があまりとれませんです。
隙間時間に少しずつ描いて、やっと今回のお話を描き終えられました。
今回で手術後3日目のお話は終了です。
私は手術後6日目で退院したので、入院生活の話は残すところ…えーと…あと何話になるんだ?
ここまでくれば、もう日に日に回復していくだけの話になっていくので、あと…3話くらいでいけるかな。どうかしら。
その後は、退院後の生活、
術後1カ月検診、
3カ月検診、
半年経った体の様子、
余裕があったら術後1年(今から2カ月後になりますね)経った体の様子、
をサラリと描いて完結させる予定です。
ここまで長々と読み重ねてくださっている方、
ダラダラな連載で申し訳ありません。
あともう少しで完結させる予定でおりますので、
最後までお付き合いいただけたらありがたいです。
今回は文字の割合が多かったですね。
ここまでお読みくださり
ありがとうございました(^^)
ウチ ウメコ
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